腹腔鏡下手術
当院における腹腔鏡下手術について
当院では低侵襲性手術(体にやさしい手術)といわれる腹腔鏡下手術を日本においても早期(1991年)に導入し、約30年にわたって様々な疾患に対しその手術法を実施してきました。
対象疾患としましては、胆石症・鼠径ヘルニア(脱腸)などの良性疾患、胃癌・大腸癌などの悪性疾患、さらには急性虫垂炎(盲腸)・十二指腸潰瘍穿孔・腸閉塞などの救急疾患などで、様々な疾患に対し幅広く行っております。近年では、鼠径ヘルニア(脱腸)に対して積極的に腹腔鏡下手術を行い、症例数も増加しております。
腹腔鏡下手術(内視鏡外科)とは
1990年より胆石症などに対して行われるよう になってから急速に普及 した手術であり、腹腔鏡(カメラ)を使いテレビモニターを見ながら、直接手で触れることなく器械を使って行う手術法です。従来の手術法(開腹術)と比較すると次のような利点があります。
- 傷が小さく体に対する侵襲が少ない
- 手術後の痛みが軽度である
- 傷跡が目立ちにくい
- 早期離床が可能であり回復が早い
- 早期退院が可能
様々な点で患者さんにとって楽である手術法です
胃切除術の場合の創(傷)の大きさの違いは、以下の様になります
みぞおちから臍部(おへそ)まで場合によってはおへその下までの傷となります
おへその傷は約2.5cm他は5mm(1ヶ所12mm)となります
腹腔鏡下手術の学会による技術認定について
近年の腹腔鏡下手術の発展にはめざましいものがあります。しかし、その手術手技は容易ではなく、2004年に日本内視鏡外科学会が世界で初めて手術の技術を評価するための技術認定試験を実施しました。この試験は、実際に行った手術件数(経験数)や全経過を収録した手術ビデオによる各専門領域別の技術評価であり、2005年5月に第1回の合格者発表が行われました。消化器・一般外科領域での合格率は60%以下(53%)であり、全国における技術認定取得者は、200名以下という厳しい結果でした。当院でも、我々が行ってきた腹腔鏡下手術の技術の妥当性・信頼を得るために常勤・非常勤含め腹腔鏡下手術に携わる上級医が第1回から技術認定試験を受験し、技術認定を取得しております。
日本内視鏡外科学会技術認定取得者(消化器・一般外科)
(常勤)
消化器外科部長 兼副院長
普光江 嘉広 (ふこうえ よしひろ)
(非常勤)
昭和大学病院消化器一般外科 食道癌センター
特任教授・センター長
村上 雅彦 (むらかみ まさひこ)
教授
大塚 耕司 (おおつか こうじ)
腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術
当院では2015年より、鼠径ヘルニア(いわゆる脱腸)に対しての腹腔鏡下手術を本格的に導入しました。現在では(2021年4月現在)ほとんどの症例を腹腔鏡下手術で行っております。
鼠径(そけい)ヘルニア、いわゆる脱腸とは
脱腸という病名はよく聞くことがあると思います。正確には鼠径ヘルニアといいます。どういう病気かというと、鼠径部(太ももの付け根)の筋膜の間から腹膜が腹腔内臓器(主に腸管)といっしょに皮膚の下に出てくるものです。
原因は?
①中年以降に見られる場合は、主に老化によって筋肉が弱くなって起きてきます。
②先天性の場合、小児期に見られます。
治療について
基本的には手術治療しかありません。手術しないとどうなるかとよく聞かれますが、出っぱなしになるとヘルニア嵌頓(かんとん)という状態になる事があり、その場合、脱出した腸が壊死を起こしてしまい、緊急手術となることがあります。
また、嵌頓しなくても痛みや違和感でてきたり、日常生活上具合がよくありません。よって鼠径ヘルニアと診断されれば、基本的には手術が望ましいと思われます。手術は、以前はヘルニアの出てくる部位を直接縫合・閉鎖していましたが、現在ではメッシュというポリプロピレン製の人工被覆材で穴を塞ぐ方法がほとんどです(下の写真 *様々な種類のメッシュがあります)
メッシュを使う手術法は、大きく分けて2つの方法に分けられます。一つは、従来からの方法で鼠径部の皮膚からアプローチする方法です。もう一つは、腹腔内あるいは腹膜前腔にカメラを入れてカメラガイド下に行う手術法です。手術による創(傷)は、それぞれ以下の様になります(図1、 2)。
当院では2015年より腹腔鏡下ヘルニア修復術(TAPP 法といいます)を積極的に行ってきました。その理由は、鼠径部からのアプローチと比較して次のような利点があるからです。
①手術後の痛みが少ない(かなり違います)→早期退院
②創(傷)が小さく目立たない
③腹腔内から観察するためヘルニアの状況が把握しやすい
などです。
☆鼠径ヘルニアについてご相談などありましたら、消化器外科外来にお越し下さい(お電話にて予約が望ましいです)
診療スケジュール
消化器外科外来にて対応しています。消化器外科を参照ください。
担当医師
普光江 嘉広
ふこうえ よしひろ
副院長 兼
消化器外科部長
出身大学
平成2年 昭和大学医学部卒業
資格
- 医学博士
- 昭和大学消化器一般外科兼任講師
- 日本外科学会専門医・指導医
- 日本消化器外科学会専門医・指導医
- 日本消化器内視鏡学会専門医・指導医
- 日本内視鏡外科学会技術認定医
専門分野
腹腔鏡下手術(内視鏡外科)、消化器内視鏡
村上 雅彦
むらかみ まさひこ
昭和大学病院 食道外科 食道がんセンター
特任教授・センター長
出身大学
昭和56年 昭和大学医学部卒業
資格
- 医学博士
- JCOG胸腔鏡下食道手術認定医
- 臨床研修指導医
- 日本腹部救急医学会評議員・暫定教育医
- 日本外科代謝栄養学会評議員
- 日本外科系連合学会評議員・フェロー
- 日本消化器内視鏡学会指導医・評議員
- 日本外科学会専門医・指導医・代議員
- 日本臨床外科学会評議員・雑誌編集委員
- 日本消化器内視鏡学会評議員・指導医
- 日本消化器内視鏡学会関東地方会評議員
- 日本内視鏡外科学会評議員・
食道悪性部門技術認定医 - 日本消化器外科学会指導医
- 消化器がん外科治療認定医
- 日本食道学会評議員・食道科認定医
- 日本大腸肛門病学会指導医
- 日本肝胆膵外科学会評議員・肝胆膵外科
高度技能指導医 - 日本消化器病学会指導医
専門分野
食道の外科、胸腔鏡外科、腹腔鏡外科
大塚 耕司
おおつか こうじ
昭和大学病院 食道外科 食道がんセンター
教授
出身大学
平成7年 昭和大学医学部卒業
資格
- 医学博士
- 日本外科学会専門医・指導医
- 日本臨床外科学会評議員
- 日本内視鏡学会専門医・指導医
- 日本腹部救急医学会評議員・暫定指導医
- 日本消化器外科学会専門医
- 消化器がん外科治療認定医
- 日本内視鏡外科学会評議員・食道悪性部門
技術認定医 - 日本食道学会評議員・食道科認定医・
食道外科専門医 - JCOG胸腔鏡下食道手術技術認定医
- 内視鏡手術支援ロボット術者資格
- SAGES(アメリカ内視鏡外科学会) International Member
- EAES(ヨーロッパ内視鏡外科学会) International Member
- ISDE(国際食道疾患会議)member
- 臨床研修指導医
専門分野
外科、胸腔鏡外科、腹腔鏡外科、内視鏡治療
五藤 哲
ごとう さとる
昭和大学病院 食道外科 食道がんセンター
准教授
出身大学
平成10年 昭和大学医学部卒業
資格
- 日本外科学会専門医・指導医
- 日本内視鏡学会専門医・指導医
- 日本消化器外科学会専門医・指導医
- 消化器がん外科治療認定医
- 日本内視鏡外科学会評議員・食道悪性部門技術認定医
- 日本食道学会食道科認定医・食道外科専門医・評議員
- JCOG胸腔鏡下食道手術技術認定医
- 内視鏡手術支援ロボット術者資格
- 臨床研修指導医
専門分野
食道の外科、胸腔鏡外科、腹腔鏡外科